bitter sweet mind

「お、おぉぉぉぉ……」

「お帰りなさ~い」

 ひと足先に部屋に上がっていたわたしはとびきりスマイルで草太をお迎え。

 なぜか居間のテーブルの上を凝視したまま玄関から動こうとしない彼の手をとって招き入れて、

「じゃ~ん! 今日はバレンタインデーなのです!」

 えっへん。

 胸をはってそれをお披露目する。

「こいつは……チョコフォンデュか?」

 さすが草太。

 フォンデュ鍋と所せましとテーブルに並べたふんだんのフルーツで察したみたい。

「うん! あのね、草太にプレゼントだよ!! これならわたしでも失敗しないでしょう?」

 あんまり自慢出来ることじゃないけれど、それでも目一杯の愛情表現。

「なるほど……」

 あれ?

 うれしそうな表情どころか神妙な面持ちを崩さず、わたしが絡めた腕からはぷるぷる、と震えすら伝わってくる。

 やっぱり、こんなのじゃ期待はずれだったのかな。

 そっか……そうだよね。

 やっぱり普通の女の子がするみたいにとびきりな手作りチョコの方がよかったよね。

 さっきまでの幸せ気分はしおしお、としぼみ、なんだか自分がものすごく情けなくなってきちゃった。

 きゅっ、と絡めていた腕をほどき、わたしは力なくうつむくと、

「なんか、ゴメ――」

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