%短編:侵された体%
「一人は怖いし、それに高いところも苦手なんです!」
体の自由が奪われることは言ってあったが、
頭の中で声がすることや、殺されかけた話は、医者の前では黙っていた。
だって、どう考えても精神病だって言われそうだったから。
「それなら窓から離れたベッドにしてもらおう。
部屋は大部屋だから、大丈夫だよ。看護師さんも大勢いるし」
あたしの言葉を疑うこともなく、医者は優しく答えてくれて、
あたしは、ほっと胸をなでおろした。
もっとも、入院したらあたしの考えは杞憂だったとわかった。
飛び降りを防止するために、窓は人が通り抜けられないような細工がしてあったからだ。
重病の患者さんや、精神的に参っている人に配慮しているんだそうだ。
その後、いくつかの検査を経て、あたしは手術することになった。
お腹の腫瘍はかなりの大きさで、腹痛の原因はそれだろうと説明を受けた。
腫瘍を取っただけで、あたしの体を狙う何者かを阻止できるとは思えないけど、
わずかでも希望があるなら、それにすがりたい。