女心と秋の空〜ツンデレ彼女の涙の秘密〜
変化する気持ちと日常
ゲームの世界で勇者が助けるお姫さま。
勇者が困っている時に手助けをするお姫さま。
どちらかと言えば後者なのだろうか。
あぁ、やっぱり雪村には勇者よりお姫さまのが似合ってる。
「何地面にへばりついてんのよ、風邪ひくよ?」
上から見下ろす雪村は、優しく微笑みながら傘を差していた。
そしてオレの前に屈むと制服のポケットからハンカチを取り出して、そっと撫でるようにオレの顔を拭きはじめた。
その様子をただボンヤリと眺めていると、次第に胸の鼓動が激しくなってきた。
抑えようとしても抑え切れず、体から心臓が飛びだしそうな感覚に、ただ雪村にバレないように平静を装っていると、
「アハハッ。何固まってんのよ。はい、これで拭いて」
ある程度拭いたところでハンカチを手渡してきた。
まだ、拭いてもらっていたかっただなんてそんなことを思う自分がいて、うまく言葉を発することもできず、ぶっきらぼうにそれを受け取る。
微かに触れた指先に神経が集中する。
ドクン、ドクンと。
雪村の女らしい一面になぜか緊張を覚えてしまった。