白と青の境界線
「機長。お砂糖お一つですよね、どうぞ」
「ありがとう」
お客様を搭乗させる前にコックピットへとドリンクを運び、すぐに持ち場へと戻る。
今日は晴天。
広がる青空に浮かぶ無数の白い雲は、風に流れて緩やかに動いている。
小さな窓から見える空は確かに晴れている。
すべての業務を終えた私は気が緩み、動作をやめて遥か彼方を見つめた。
雲一つない晴れ渡る空に憧れて、そんな世界を垣間見て近づいたような気になっても、それでも心の中には今も雲がかかる。
青空に白い雲がかかるように。
真っ青な色になることはきっとないのだろう。