白と青の境界線

「すみません、あのー」


今日もお客様に呼ばれ、様々な要望を受ける。

水平飛行から着陸準備に取りかかるまでの僅かな時間。

だけどこんなにも長くて、早く時間が経ってほしいと感じたのは初めて。


淡々とこなす業務。

近づく目的地。

書類に真剣な彼。


隣を通るたび妙な緊張感を覚え、いつもとは違う意味で気が休まることがない。


だけど……。

いつまでも書類と睨めっこしている彼が、私に気付くことなんてないんだって気が緩みはじめたその時。

不意に名前を呼ばれた。


「あ、れ? もしかして麻央?」



< 23 / 60 >

この作品をシェア

pagetop