白と青の境界線
「麻央ー、聞いてる?」
「あっ、ごめん。……久しぶりだね、怜耶」
さすがに怜耶のことを無視できず、差し出された名刺を受け取る。
あの出来事以来何となく避けていたのは、やっぱり知られたくなかったからで。
今思えば、彼のこと好きだったのかもしれない。
「なぁなぁ」
制服の裾を掴まれて体を引き寄せられる。
シトラス系の爽やかな香りが鼻を擽る。
そっと耳打ちしてきた怜耶に一瞬ときめいてしまったけれど、次の瞬間には体勢を元に戻し名刺をポケットに直した。
「……考えとく」
「ん、じゃあ連絡待ってるからな」
笑うとえくぼのできる頬。
その笑顔は変わっていないって思ったけれど、時は人を変えるのかもしれない。
私がこんな風になってしまったように。