白と青の境界線
ようやく動き始めた体で、視線を落としたまま店内へと戻る。
時間帯も遅い店内はお客も少なく、いつもより声もよく響き渡る。
だからこそ……
聞きたくないことまで聞こえてしまうんだ。
「麻央さんってさー、確かに綺麗で仕事もできるけど、何か苦手なんだよね」
私がいない時、言えばいいのに。
いつ帰ってくるかも分からない状態で、そんなことを言う小百合に呆れ返る。
「そうだねー。何考えてるか分からないし、お高くとまってる気がしてこっちがバカにされてる気になるんだよね」
別に平気。
そんな風に思われているって分かっていたことだし。
こうして間のあたりにしても、そこまで心が痛まない。
やっぱり私の感情はどこか欠落している、そう思って自分自身を嘲笑う。