白と青の境界線
「麻央お疲れー」
そこにやってきた日向。
以前と変わらない声色とトーンで、挨拶だけをする日向。
そう。
挨拶だけの関係になった。
顔を合わせればあれだけ話しかけてきていたのに、それがパタリとなくなって、そして……。
「お疲れ」
私と同じ表情を浮かべるようになっていた。
笑顔だけど心から笑っていない。
作り物の笑顔。
それは自分自身がよく分かる。
長いことその笑顔と付き合っていた私が、分からない訳がない。
あの日、あんな言葉を投げた私に向かって何も言い返さなかった日向は、哀しげな表情を浮かべてごめんねと呟くだけで店内に戻っていった。