俺様先生は王子さま
去り際に、ふと、あたしは思いなおす。


「ねえ、ハゲを治す薬、知らない?」


「えっ? はげ?」


「そう、ハゲ」


ケン坊は、目を丸くしている。


「ハゲ男に取り入るつもりなの?」


取り入る?


「まさか! ただ、聞いてみただけ」


あたしは背を向ける。


「待って、サエちゃん」


ケン坊にそう呼ばれて、体が固まる。


「何か、知ってる?」


「これを使いなよ」


ケン坊がポケットから、黒い小瓶を取り出す。


「ハゲを治す薬? 大丈夫なの?」


「大丈夫。秘薬なんだ」


アヤシイ。


アヤシ過ぎる。

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