【K.A】アリスに魅せられて。
「ああ…きみは本当に知らないんだね」
「なにをですか…?」
おじさんはちらりと横を見た。
視線を折ってアリスもその方向を見た。
「ウサギさん!!」
ぐったりと横になっている。
白い顔はさらに血の気が消えて、具合が悪そう。
「大丈夫、気を失っているだけだから」
「なんで…なんだか水の中に引っ張られているみたいだった…」
ウサギが掴んだ腕を見つめる。
「それはきっと彼に哀しいことがあったからだよ」
「え…?」
哀しそうに微笑むおじさんのよこに、すっとレモン色の巻き毛の女の人が出てきた。
「私は小鳥よ。私が説明してあげる。」
綺麗な細長い瞳。
想像していた声とは違い、低く、今のアリスのような掠れた声をしていた。
びっくりしたアリスの顔を見て小鳥は微笑んだ。
「驚いたでしょう?私の声。これでも昔はとても綺麗な声をしていたのよ」
たしかに、とても美しい声を持っているみたいだ。
…今も。
なんで…
揺らいだアリスの瞳を見て小鳥は口を開いた。
「これはずっと昔のことよ…」