【K.A】アリスに魅せられて。
あたしは目をもう一回ギュッと瞑り、また見る。
…やっぱりウサギだ。
でもおかしい。
白くて長い耳はやっぱりウサギ。
小さな尻尾も…。
でも…
おかしすぎる!
「大変だ…遅刻してしまう!!」
喋っているんだから。
それに普通ウサギは服なんか着てないはずでしょう?
なのにあのウサギは赤いチョッキを着て、片手には鎖の付いた金の時計を持ってる。
不思議なウサギは森の中へ走って行った。
「あ……待って!!」
固まっていたあたしは気づいたら走り出していた。
どきどきしてきた!!
この機会を逃したら、あたしはまた退屈な世界へ逆戻りしてしまう。
そんなの絶対にイヤ!
あたしは知らなかったんだ。
もう物語が動き始めてたことに…。
ウサギは木の幹の大きな穴に吸込まれるように入っていった。
え…っ
足を止める。
さすがに、入れない…
「そんな…」
いや、がんばればあたしも…
あたしは片足を恐る恐る入れてみた。
ーズッ…
「きゃっ…」
あたしは穴に吸込まれてしまった。