【K.A】アリスに魅せられて。
え…
あたしは夢でも見ているんだろうか。
さっきのうざぎが…
白い髪、
赤い瞳。
白髪頭の少年は白いシャツに赤いチョッキを着て、片手に持った金時計を見ている。
「遅刻したら大変だ…!!」
言ってることはやっぱり同じで…
彼はあのウサギなのだろう。
現実味の全くない世界に来てしまったみたい。
あたしは呆然とウサギを見つめる。
今は少年となったウサギは走り出し、いつのまにか現れた赤い扉をくぐり抜けていってしまった。
バタンッと大きな音が響き、あたし1人になったこの広い部屋は沈黙に包まれる。
もう追いかける気力は失せていた。
好奇心よりも恐怖が芽生え始めていた。
なんでこんなところに着てしまったんだろう。
返る道も、どこへ行くのかもわからないような世界へ…
帰りたい。
『なに?もう終わりなの?』
どこからともなく声が聞こえた。
ばっと伏せていた顔を上げる。
その声は上や下や右から左、いろんな場所から聞こえているようで、ぐるりと見渡してみたけれど声の主がどこにいるのか分からない。