先生と王子様と演劇部な私。
 抜きにできない問題です、と言い返したかったけれど、朗先生の視線から逃れることはできない気がした。




「……嬉しいです。と喜んでいいんですか?」



「柚子は肝心なところは、いつも疑問系だなぁ」


 朗先生はふわり、と微笑むと私の手を取った。あれ? この笑顔……。




「君の思う通りに」


 そう言いながらまた、朗先生は手の甲にキスをした。




 私はそれを、魔法がかかったみたいにぼんやりしたまま見ていることしかできなかった。





 ――こうやって朗先生は私の心を惑わせる。



 もう、止まりませんよ? 心の中で朗先生に訴えてみた。口に出す勇気はちょっとないけど……。



「――会わせてやるよ」
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