先生と王子様と演劇部な私。
 朗先生はそう言うと、私の前にポテトと飲み物を置いた。堀木戸さんはお構いなしにそのポテトを取って口に入れようとする。


「柚子、夕飯は? また家に一人なら何か食べて帰るか?」

「あ、いえ、今日はママがいるから」

 そんなやり取りを聞いた堀木戸さんが、手からポテトを落とす。



「朗が……生徒の心配してる……体調でも悪いのか?」


 堀木戸さんが真剣な眼差しで朗先生を見ると、また机の下で鈍い音がした。



「って! 同じ足蹴るなよ!」

「ほう、右足も蹴って欲しいと?」

「ばっ! 鬼!」



「あはは」

 朗先生と堀木戸さんのやり取りが面白くて思わず笑ってしまった。

「柚子ちゃん、笑顔も可愛いねぇ」


 堀木戸さんが悩殺的な微笑を向けてくる。


「……お前、もう一回蹴られたい?」

 朗先生に言われると、堀木戸さんはふくれっ面になった。二人を見てるとどうも先生同士には見えない。 


「あ! ねぇ、今年の台本見せて! 部活後なら持ってるよね?」

 堀木戸さんが思い出したように顔を輝かせた。

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