先生と王子様と演劇部な私。
 私は頷いて鞄を開ける。中には台本が二冊。


 一冊を取り出して渡した。


「お、ロミジュリかぁ。ミゼラブルとかが良かったなぁ~。また由美ちゃんの選考かなぁ」


 堀木戸さんは文句を言いながらも、それでいて楽しそうに台本をめくっている。



 私は鞄の中のもう一冊の台本を指でなぞった。もう何度見返して練習したか分からない、ボロボロの台本。




 表紙にはシンデレラ、と書かれている。



 私は学校で見つけたシンデレラの台本を持ち歩いていた。中身は間違いなく、五年前にも使われていたもの。


 ちなみに台本のマスター版はちゃんと別にあるので、いくらでもコピーできる。



 台本を置いた堀木戸さんがいきなり朗先生の手を取り、喋り始めた。

 ロミオの台詞だ。


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