先生と王子様と演劇部な私。
 続ける堀木戸さんを見て、朗先生は一瞬呆れた顔をしたが、真っ直ぐに座り直す。


 朗先生は優しく微笑み、語り掛けるように台詞を口にする。何もかも受け入れるような優しい微笑みに横から見ていてドキリとした。

 その朗先生に真剣な眼差しで台詞を返す堀木戸さん。朗先生が驚きの声を上げる。

 ――どうやら、堀木戸さんがロミオ、朗先生が修道士ということらしい。こんな途中のシーンを急に始める堀木戸さん、すんなり応じてしまう朗先生。本当に二人とも演劇部だったんだなぁとしげしげ見つめてしまった。



「ったく、いつまでやらせんだ」

 一通りの二人のやり取りが終わると、朗先生は言葉とは裏腹に楽しそうに笑った。

「どうだった? 俺らの小芝居」

 堀木戸さんに聞かれ、私は小さく拍手して応える。


「朗は修道士役のまんまで、俺はロミオに殺されるちゃうジュリエットの従兄弟ティバルト役だったんだけどね」

 堀木戸さんは首をすくめて笑った。その舞台も、とても見てみたいです。





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