先生と王子様と演劇部な私。
「柚子ちゃん!」


 ちょうど来客用玄関の前を通ったとき声を掛けられた。こんなところで声をかけてくる人なんて?



「堀木戸さん!」



 なんと、そこにいたのは堀木戸さんだった。軽くジャケットを羽織っている姿がまぶしい。


「はろぅ」

 堀木戸さんは笑顔で片手を上げると、見知ったように来客用スリッパに履きかえて中に入ってくる。


「ど、どうしたんですか? 堀木戸さん、学校は?」

「俺部活顧問してないし、今日はすぐ上がれたから」

 そう言うと、当然のように私と歩き出した。


「柚子ちゃんがいて良かったよ。いなかったら、さすがに不法侵入みたいな気分になるし。衣装確認しようと思ってさ。どうせなら衣装着た方が良いでしょ?」


 堀木戸さんは、衣装ある場所案内してね、と言いながら私より前を歩いて衣装の保管してある教室へ向かった。さすが卒業生。
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