先生と王子様と演劇部な私。
「で、三年になって、初めて俺はこの王子様役になったんだ」

 堀木戸さんが衣装を優しく撫でた。

「そのライバルさんは準主役?」


 と言っても、シンデレラの場合準主役に該当しそうな役がないけど……。


「そいつは執事、の予定だった」

「予定だった?」



「あはは、ま、この話はこれくらいでいいでしょ。とにかく、俺にとっては大事な王子様ってこと! 理由がなんであれ、やっと主役の座を掴んだんだよ」


 堀木戸さんはちょっとバツが悪そうに笑って、だから柚子ちゃんもライバルになんて負けるなよ、と私の頭をポンポンと叩いた。


「私もそんなに強くなれるかなぁ」


 思わずボソッと呟くと、堀木戸さんは優しく微笑んだ。


「俺も当時は嫉妬の嵐さ。笑えるのは後になってからだよ。そんなもんだよ」


 きっと、堀木戸さんは相当辛い思いをしていたはずだ。主役争いなんてしたことはないけど、もし、シンデレラの公演が叶ったとして、シンデレラ役を違う子がしていたら? 想像しただけでもとても耐えられない。


 何だか、山野くらいのことを気にしてた自分が恥ずかしくなってきた。
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