先生と王子様と演劇部な私。
 ……あ。

 視線を感じた。後ろを振り向くと、いつからいたのか分からない朗先生が入り口に立っていた。目が合う。


 また、見てた? どうして先生はいつも私を見てるんだろう。山野のことも見てたりするのかな? 恥ずかしいと思ったばかりなのに、やっぱりそんなことを考えてしまう。


 ――何故か朗先生は少し、不機嫌そうな顔をしている。


「よぉ! 朗!」


 私の視線の行方に気が付いた堀木戸さんも振り向いて、朗先生に気が付いた。朗先生は静かに中に入ってくる。

「平、何してんだ?」


「柚子ちゃんに会いに来た」


 朗先生が、カチンと音がしそうなほど、片方の眉をピクリとさせた。


 バシッ。
 堀木戸さんの後頭部から軽快な音。


「いてっ! 冗談に決まってんだろ? 衣装見に来ただけだよ」


 堀木戸さんは頭を擦りながら先生を睨むけど、朗先生は黙ったままだ。



「何でそんなに怒るわけ?」

「生徒を守るのは先生の役割なんだろ?」


 やっと口を開いた朗先生のセリフに、堀木戸さんは目を丸くした。
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