先生と王子様と演劇部な私。
「へぇ、生徒だから? まさか朗の口からそんなセリフが出ようとは……。あはは。教育実習とかあんなに嫌がってたのにどういう風の吹き回し? 自分の予備校に来る学生にすらウザそうにしてたのに?」


 堀木戸さんは笑った後、本当に珍しい物のように朗先生を見ている。朗先生はまた何も答えない。



「ちょっと、柚子ちゃん、どういうこと? こいつ頭でも打った?」

 朗先生に回答を求めるのは諦めたらしいけど、私に聞かれても、さぁ? と首を傾げるしかなかった。教育実習をしている頃の朗先生を私は知らないし……。


「そっか、柚子ちゃんが知ってるはずないか……。こいつんちってさ、予備校経営してんじゃん? で親に、箔付けに大学院行くか教免取れって言われて、期間の短い教免取ったってわけ。そしたら教育実習の期間、毎日教師なんて嫌だ嫌だって言い続けてたんだよ」


 そこで区切ると、堀木戸さんは涙ぐむ真似をする。
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