先生と王子様と演劇部な私。

11:自分の気持ち

 いよいよ学園祭は今週の土曜日に迫っている。あの保管用の教室で手を払って以来、朗先生とは一言も口をきけていない。


 申し訳ないけど、クラスの方は文化部じゃないメンバーに任せっきりで、私は部活に専念した。


 脇役な私はクラスを手伝う余裕はあるけど……山野朋香が現れるのを見たくなくて、毎回逃げるようにエミを連れて部活に向かっている状態だ。


「柚子~、エミ~、あんたらも午前中とか、午後も少し出れるんだよね~?」

 部活に向かうため教室を出ようとすると、クラスメートに声を掛けられた。演劇部の公演は午後だから、大半は自由。公演の準備も一年生がやってくれる。

「うん」

 エミと二人で返事をした。

 そこへ、山野たち一年生がやってきた。咄嗟に朗先生を見ると、目が合った。と言うか、また私を見ていたと思う。

山野のことを見てないことに少し安堵したものの、朗先生に駆け寄る山野が視界の隅に映り、顔を背けた。

「朗せんせぇ~」

 目は逸らしても、声は聞こえてしまう。モヤモヤと胸の中が黒くなってきた気分だ……。

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