先生と王子様と演劇部な私。
 部活も終わりに差し掛かった頃、朗先生が練習教室にやってきた。思わず顔がほころんだのもつかの間、後ろから顔を出したのは山野だった。


 正解には山野と二人の一年生。二人は山野に連れて来られたらしく、山野の制服の裾を引っ張り、オドオドしている。


 演劇部のみんなは突然の訪問者を横目で見つめた。エミなんて、私に憤慨した顔を向けてくる。



「演劇部に入れば朗先生に毎日会えるんですよね。入部しようかなぁ」


 山野は朗先生の後ろ姿に向かって声を掛けているが、先生は無視を決め込んでいる。どうも勝手に着いてきた、という感じらしい。


 ――ってか、演劇部に入部だぁ? 女子部員の顔が険しくなった。それほど、山野朋果は媚びた調子だったから。



「……あんた、ふざけんじゃないよ」


 私が口を開きかけたとき、前に出たのはエミだった。


 一瞬私のために言ってくれたのかな? と思ってしまったけど、エミは真っ直ぐ山野朋果を見つめている。



「みんな演劇することが好きだったり、何か目標があって入ってるんだから、そんな気持ちで入部されたら迷惑だよ」


 エミがピシャリと言い放つ。

< 136 / 238 >

この作品をシェア

pagetop