先生と王子様と演劇部な私。
 これはきっとエミの本心からの言葉。エミは中学から演劇をしていた。演じるのが好きなのだと笑顔でよく話してくれる。



 それを……。



「やだぁ、先輩なんですかぁ? 演劇に目標ってぇ?」


 反省するどころか、山野はクスッ、と馬鹿にしたようにエミを鼻で笑った。


 このくそガキ……。

 私が追い出そうと近付くと、山野は肩をすくめる。

「シンデレラとかやって、ニコニコ微笑んでればいいんでしょう?」



 ――――!!




 シンデレラの名前を出したのは、きっとただの偶然。そんなの分かっていたけど。





 咄嗟に私は、挙げた右手を振り下ろしていた。








 パシッ。





 ……。



 ――――何故?




 私の右手は山野に触れることなく、朗先生に掴まれていたのだ。





「仲舘……」


 いつの間にか山野と私の間に立った先生は、静かに私の名前を呼ぶ。



 ――何よ。



「佐々木先生の……バカッ!」

 苗字で呼ぶという小さい抵抗を見せても仕方ないとは分かっていたけど、何だか悔しくて言わずにいられない。

 そしてそのまま、エミが呼ぶ声にも振り返らず私は教室を立ち去った。
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