先生と王子様と演劇部な私。
 それを聞いた瞬間、カッと熱が上がったのが自分でも分かる。


「何で止めたんですか?」

 自分でも驚くほど低い声だ。



「――守るためだよ」


 朗先生がゆっくりと答える。



「……そうですよね、先生は生徒を守るのが仕事ですもんね」


 山野なんかでも。私がそう続けて言うと、朗先生は私の右手を掴んだ。こんな気分なのに、ドキリとしてしまう。



「誰を守ったと思う?」


 まるで私とでも言いたいの? どうして、あれで?


「山野をあのままにしてたら、山野がみんなに目を付けられますよ。きっと私だけじゃなくって」


 逃げ出したいのに、右手を掴まれていて逃げられない。私は苦し紛れに言葉を吐いた。



「だから?」


 朗先生が無表情に口を開く。


「え?」

「あの一年が目を付けられたからって何なんだ? あいつが勝手にやってることだろう。俺には関係ない」


「……」

「柚子以外があの一年を引っ叩こうが、関係ない」


 どういう意味? 私は目を丸くしてしまう。
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