先生と王子様と演劇部な私。

12:王子様とライバル

 学園祭前日。


 部活の後、クラスに戻るとまだ数人が最終仕上げをしている。

 山野もいなかったし、今までずっと手伝っていなかったので、最後の片付けを買って出た。終わった時には外はすっかり暗く、女の子はもう全員帰ってしまっている。


「柚子ちゃん、帰り暗いから一緒に帰るか?」


 同じクラスの男子達が声を掛けてきてくれる。

「あ~……」


 どうしようかな、と思っていると後ろから声がした。


「仲舘は」


 振り向くと、朗先生だった。


「また、お父さんに迎え来てもらうんだろ」

 またお父さん、の部分を強調するようにそう言うと、男子は朗先生にちょっとビックリした顔を向けた。喋った、と呟いたのを聞き逃さない。


「あ、はい……」

 思わず肯定してしまう私。

「迎えなんていいなぁ。お父さんじゃ乗せてとは言えね~し。じゃぁ俺らは帰るね~。お疲れ様でした~」


 男子はそう言って帰って行った。朗先生は、フンッと鼻を鳴らす。って、先生? パパは迎えに来ませんし、来たこともありませんが?

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