先生と王子様と演劇部な私。
「あいつらと帰りたかった?」

 朗先生が両手をポケットに入れながら首を少し傾げた。そんな仕草もモデル並みに様になっていて、見惚れるほどカッコいい。


「いえ……。ただ暗いんで」


「心外だな」


 朗先生が口をへの字に曲げる。先生って意外に表情豊かなのかも……。



「俺が送っていかないと思ってたのか?」

 俺が送っていくのが当たり前、という口ぶりに顔がカーッと赤くなってしまう。


「こんな暗いんだから、無理やりでも送るし」


 さらにそんなことまで言ってくるので、もうドキドキして死にそうだ。自分がどれだけ赤くなっているかは想像したくなかった。


 こないだキスされてから二人きりになるは初めてだもん。意識するなっていう方が無理でしょ?


「柚子、ご飯は?」

「あ、今日はママが……」

 それを聞いた朗先生は、そうか、と少しだけ微笑んだ。

「ママがいない時とか言えよ。またメシ食いに行こう」


 こんなことを言われて嬉しくないはずがない。私は満面の笑みで、はいっ、と頷いた。
< 143 / 238 >

この作品をシェア

pagetop