先生と王子様と演劇部な私。
 この流れは言わなきゃだめだよね……。


「あ、あの。実は私、五年前の学園祭見てて、その王子様がもう一度観たくて……」

 当たり障りのない程度に言うと、朗先生は、それで? と続きを聞いてくる。

「その話をしたら、堀木戸さんがワンシーン演じてあげるよって」


「平の野郎……ざけんな」

 朗先生が唇をギリっと噛み締めた。真正面を睨みつけている。


 あ……。


 そこで、ふと気が付いた。


「朗先生の叫んでた『たいらざけんな』って……」


 川辺でストレス発散だと叫んでいたのは、平ざけんな……?
 朗先生はすぐには答えず、黙って運転をしている。


「朗先生って、堀木戸さんのこと嫌いなんですか?」

 思わずストートに聞いてしまった。朗先生は少し、考えるように手の甲を口に当てる。


「……嫌いでもある」

「つまり、好きでもある?」

 私がすぐに聞くと、先生は、あぁ、と呟く。この関係ってもしかして……。
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