先生と王子様と演劇部な私。
「あぁ」


 期待していたけど、そう返事が返ってきて思わず顔が赤くなってしまう。
 でも、朗先生ってば、目を逸らして横を見ながら言っていたんだよね……。


「ちゃんとこっちを見て言ってくれればいいのに」

 そう呟くと、朗先生は私を斜め上に見上げて大きく溜め息を吐いた。


「……人の気も知らねーで」


 朗先生が微かに聞こえるくらいの小さな声で言う。


「え?」


「こっちが恥ずかしいから、向こう行け」

 朗先生はそう言って、また横を向いてしまう。


 ……こっちが恥ずかしいって、それって……?


 良い意味なのか悪い意味なのか、どっちと判断していいか分からずに立ち尽くしていると、朗先生はコーヒーを飲み干して立ち上がった。そのまま私の前を横切りると、コップを専用のゴミ箱に捨てに行き、ゆっくり戻ってくる。


 半分ショックと半分期待で動けないままの私に見向きもせず、朗先生はまた私の前を反対から横切った。
< 154 / 238 >

この作品をシェア

pagetop