先生と王子様と演劇部な私。
 やっぱり悪い方の意味? 恥ずかしいって、似合ってないから見てる方まで恥ずかしくなるとか?


 数秒の間に思い悩んでいると、通り過ぎる瞬間に先生が囁いた。



 とても、小さな声で。





「ホントに似合っているよ」


「……っ!」



 そして、何事もなかったようにまた椅子に腰掛けた。



 朗先生! それ、反則です!!



 私は真っ赤になると、勢いよくペコリとお辞儀をしてスタッフスペースから外に出た。



 そして体を丸めてコブシを握り、心の中で思い切り叫んだ。


 きゃーーーーーーーっ!!

「きゃあぁ」


 えぇ? 今の叫び声は私じゃないよ?
 キョロキョロとすると、数人のメイドたちが席の一角に集まっているのに気が付いた。


「……?」


 何だろうと近寄ってみると、女の子だちの群れの中心に全身黒のコーディネイトで、モデルのように椅子に座っている男の人の後姿が見える。


「君たちホント可愛いねぇ」


「きゃぁあ、ご主人様!」


 黄色い声が上がる。


 ……この声って……。

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