先生と王子様と演劇部な私。
 二人が講堂を出て行くと、私は朗先生をまじまじと見た。


 初めて見る眼鏡をかけてない朗先生の顔は、とても綺麗だった。少し見えにくいのか、時折細める目が艶っぽくて、横から見ているだけなのに、クラクラしそうだ……。


「先生が王子様?」


「……あぁ」


 朗先生が、こちらを向いて頷いた。確かに今の先生を見ていると、記憶の王子様の面影と重なる気がしてくる。


 ――じゃぁ、私のこと、覚えてますか?


 そう聞きたかったけど、聞けなかった。覚えてなかったらショックで立ち直れないかも知れない。朗先生が相手なら、尚更のこと。


「もうワンシーン、演じてやるよ」


 朗先生はそう言うと、襟をピッと整えて舞台の中央に移動した。けど、もうワンシーン……?

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