先生と王子様と演劇部な私。
 こういうときは、わざと数秒目を合わせておいてから、何事もなかったかのように逸らす。


 きっと柚子は何で目が合うのか不思議に思うだろう。普段の俺は生徒と目を合わせようとしない。感が良ければ違いを感じるはずだ。



 少なくとも、五年前にこの俺と会っていることは分かっていないようだから、意味深に見てやる。




 気付け。



 気付け。



 早く思い出せ。




 そう願いを込めながら。
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