先生と王子様と演劇部な私。
「……シートベルト」


 朗先生は、私のシートベルトを引くと、カチっと締めてくれた。先生の腕が、体が、私に触れそうなくらい近い。


 柔らかい髪の毛が私の鼻先を掠めた。シャンプーかな? いい香りがする。


 でもあまりにビックリして、そんなことを考えてる間も私は固まったままだった。



「ビックリしすぎだ、ばーか」


 先生は私の頭をポンっと叩くと、意地悪そうに笑っている。



 わ、わ……! 朗先生が笑った顔初めてみた!



 笑ったって言っていいか分からないくらい、人のことバカにした顔だったけれど。


 何か勘違いしてたのがバレたかな……。は、恥ずかしい。
 私は一人で赤くなったり、青くなったりしていた。
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