先生と王子様と演劇部な私。
 今日は苗字ですか……そう思っていると、朗先生は細い顎をクイッと出口に向ける。

「ふへ?」

 さすがに意味が分からず、石川先生を見た。

「佐々木先生が衣装持ってくるの手伝え」

「へー」(えー)

 確かに、そろそろ衣装を合わせてもいい時期だけど、衣装運びは一年生の仕事だ。


「使えん」

 朗先生は短く言うと教室を先に出た。つまり、舌噛んで練習にならない、ということですかね……?
 

 一年生が慌ててて、行きます、と言ってきたけど手を振って断った。
 中学で演劇やった子も多くて、私より上手い一年生も多い。所詮、年齢が上なだけなんだし、役立たずなら働かなくちゃね。


「ひってきまーす」(行ってきまーす)

 慌てて先生の後を追う。舌噛んだ脇役は、せいぜい雑用でもしますよーだ。
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