先生と王子様と演劇部な私。
「言えるけど?」

 朗先生は涼しい顔で言った。嫌味を言ってる姿さえ、今はあり得ないくらいカッコ良く見える……。


 こんなに何ともないように言えるなんて……。普通は言えない。かなり練習しないと言えない。


「へんへぃって、へんへきひへた?」

 私が聞くと、先生は眉間に皺を寄せながら、眼鏡をクイと押し上げる。

「さすがに何言ってるのか分からない」


 うぅ、だってまだ舌が痛いんだってば。私が恨めしげに見ると、先生は私の頬に手を当てた。

「!?」

 ヒンヤリとした先生の手とは裏腹に、頬は急激に熱を帯びる。
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