先生と王子様と演劇部な私。
 仕方ないので手伝おうとすると、先生に後ろ手で止められた。

「いいよ。今日はメインの衣装持ってくだけからな」


 じゃぁ、何のために私来たんでしょう? ってか、普通先生は取りに来なくていいのに。


「柚子はこれだけ持って。何にも持ってないのも気が引けるだろう」

 そういうと先生がポンと、自分の背広を投げてきた。季節は秋とは言え、動くとまだ暑いみたい。私は動いてないのに、熱くなってくる。原因はまた、柚子、だったから。



 背広を受け取ると、皺にならないように少し畳んで持った。確かに手ぶらで帰るのは気が引けるけど……先生の荷物持ち要員ですか……。




 何だか先生の背広を持っているというのも恥ずかしくなって、目が泳いでしまう。



 ――ふと、教室の端にあった宝石箱に目が留まった。


「あ……」
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