先生と王子様と演劇部な私。
 今度はほぼ手ぶらで先生の後をついて行くだけになってしまった。

 保管用の教室に入ると、朗先生がドサッと衣装を机に置いたので、私はその衣装を畳み出す。いい連携プレイかも。


「舌はもういいのか?」

「はい、ほとんど大丈夫です」

 ちょっとだけ痛いけど、部活中大人しくしてた甲斐があって、かなり良くなった。

「そうか。あれは痛そうだったな」

 朗先生が口元を緩めたので、途端に私はカーッと赤くなる。



 ――先生の指が口に入ってくるんだもん、あれはビックリした……。



 そんな赤い私を見て、先生はニヤニヤと笑った。こんな意地悪そうな笑いなのにドキドキしてしまうなんて、私やばいかも?


「先生って……なんで普段は無口なんですか?」

 話を逸らしたくて、思わず聞いてしまった。
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