先生と王子様と演劇部な私。
 さらにね、もしかしたら振り向いてくれるかも知れない、なんて期待を持ってしまっている相手だったり。


「きゃっ」

 エミは朗先生にビックリしたようだ。朗先生、あまり足音しないもんねぇ……。


「ま、ってことで、一緒に帰れないの。じゃね」


 エミは気まずそうに笑って、先に走って行ってしまった。やっぱ担任に恋ばな聞かれたら気まずいのか、それとも私へのバツの悪さか。……薄情なことは確かよね、うん。


「柚子、理想高いんだ?」

 朗先生が口元をニヤリとして見下ろしてくる。お前がか? って目だよね、それ。

「飯山、いい突っ込みしてたな。どこにいるのよ、だってさ」

 朗先生がエミの後姿を見ながら続けて言う。飯山ってエミのこと。


「ちゃんといたんですよ! 理想的な人が」


 王子様はちゃんといたんです。もう二度と会えなくても。
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