先生と王子様と演劇部な私。
 ふぅん、と朗先生はこちらを見もせず言った。

「それに、私は部活一筋だったんですからいーんです」

 部活ねぇ……と、やっと先生がこちらを見る。



「なぁ、柚子はジュリエット、やりたかった?」



 朗先生、酷いこと聞きますねぇ……。ま、朗先生が来たときには既に配役は決まっていたから、選考したのは石川先生と由美ちゃんだけど。


「誰でも主役になれるわけないですからね」

「そうだな……」


 朗先生の表情が少し曇った気がした。先生が目を逸らす。


「よく、三年のコンクールの時まで、裏方で舞台にも出ずに我慢できたな」


 だーかーらー! 配役って自分の希望が通るわけじゃないから。


「朗先生って、デリカシーないよね?」

 非難たっぷりに睨んでみる。
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