ドロイド進化論
来栖は、葛城の下でサイバノイドの研究を行っていた。
研究員としての彼は有能で、その頭脳を余すところなく研究に捧げていると言っても過言ではない。
ブレーン部分に入っている物が物だけに、当たり前と言えば当たり前なのだが。
黒いデスクにポンと置かれた白に、葛城はトントンと指を立てた。
「特にここ。興味深いわ」
しなやかな人差し指の先には、赤マーカーで二重に囲まれた文字。
「『バイオノイド』……ね。あなたたち『無機体』とは違い、『有機体』のヒューマンフォームロボット。
その『有機』部分の培養に成功した、と」
「ええ。でも、試作品(プロトタイプ)を造るには、研究費が足りないのです」
その予算申請のための書類が、研究部署の部長をしている葛城のところへ回って来たのは昨日のこと。
書類作成日が1ヶ月前になっているから、彼らのところから丸々1ヶ月もかかったことになる。
葛城は、一番上の右端上に並んだ判子の列をざっと見て、躊躇することなく自らの判子を所定の場所に押した。