ドロイド進化論


──いけない!

「ダメ…!!」

 咄嗟に声を上げ、来栖の腕を力一杯掴む。
サイバノイドの握力でバイオノイドの首を絞めたら、バイオノイドのブレーンは簡単にその任を解いてしまう。

 バイオノイドのブレーン部は、血流が行き渡らないとヒトのように停止してしまうのだ。

 一度停止してしまえば再起動させるしかなく、そうすればバックアップの情報がない限りはまた一から人格の再構築、更には経験の吸収をしなければならないと、以前葛城は来栖から聞いていた。

 人格が全く変わってしまうのだ、と。


 他のバイオノイドならいざ知らず、カインはプロトタイプだ。
そんなことは避けたい。


 だが、葛城の制止を聞いて、来栖は更に逆上した。

「カインを庇うのか…!」

 しまった。
 違うと葛城が声を枯らしても、来栖には届いていないようだった。
益々力を込めた瞳を燃え上がらせ、来栖は肩を震わせる。


 しかしその一方で、カインの首からは、ゆっくりと手が離れつつあった。


「……イエス、マスター」


 ぽつりと垂れた言葉に感情は見えない。

 葛城はそっと来栖から手を離すと、ゆっくりと息を吐いた。



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