ドロイド進化論


「サユミさん。僕らは少しでもヒトに近付くよう、研究されて来ました」

 冷笑は消え失せ、穏やかに話し出したカインだったが、先程のヒヤリとした彼の雰囲気を払拭することは出来ず、葛城は静かに見詰め返す。

 一言も聞き逃すまいと、相槌すら打つことはなかった。


 来栖は苦々しい表情を浮かべながらも、カインに手を出したり、話を遮ろうとする様子はない。ここまでは意見の相違はないということだろう。


 当のカインはといえば、葛城の反応が薄いことを少しも不服に感じることはないようだ。

 自らの言葉に、感情が昂るかのような微笑みを浮かべながら、真意を紡ぎ出していく。


「つまりヒトが僕らの目指す完全体であるというのなら。
無機体のサイバノイドよりも、僕ら有機体のバイオノイドの方が、よりヒトに近い──完全体に近いというわけですよね……?」

 サイバノイドという単語には来栖にちらりと侮蔑の視線を投げ、バイオノイドという単語には誇らしげな笑みを、そしてヒトには憧れの眼差しを。

 それぞれ浮かべ、カインは満足そうに口を閉じた。


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