ドロイド進化論


 喉に突っかかりながら出て来た言葉に、葛城は否定的に頭を振った。


──何を、馬鹿なことを……そんなこと、あるはずないのに……


 ヒトであるはずがなかった。

 ボディの作製のときには、予算を都合した手前何度か同席していたし、そもそもヒトの緩やかな成長では、たかだか数年であんな風になるはずがない。


 なのに来栖は、葛城に向かって、ゆっくりと自嘲気味に口角を上げた。


 ぐらり、と内部世界が反転したかのような錯覚に陥いる。
茫然と立ち尽くすことしか出来なかった。


「なぜ……?」

 漸く絞り出した声に力はなく、収束を失ったそれは一瞬にして空気に霧散していく。


「なぜ、そんなことを……?」

 老いもなく、半永久的な時を過ごせる来栖にとって、バイオノイドを早急に仕上げる必要性はなかったはず。

──何故、偽ってまでバイオノイドを?


 名声だって富だって、興味はない様子だったのだ。
バイオノイドが完成したときも、来栖を差し置き会社の名だけが轟いたことさえ、彼は気にも止めていなかったのだから。

──なのに、何故。

そして何故、カインにあのような蔑みを?


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