ドロイド進化論


 だが、頭で考える理性と心で感じる感情は、得てして伴わないものだ。


 それでも、葛城の勤めているのは日本有数のサイバノイド会社の研究所であり、彼らと接する機会も多い。

 だから、顔には極力出さないようにしているつもりなのだが。

「僕、何か悪いこと、しましたでしょうか?」


 葛城の葛藤を知ってか知らずか、来栖は感じたことをストレートにぶつけてくる。

 まだ起動初期のため、人の行動の経験吸収が少ないためだ。だから行動の経験を積むために、人の顔色を窺うような素振りをよくする。

 こういう反応が来たら、相手はこう思っている……と学習しているのだ。

そうかと思えば、このように唐突に質問を投げ掛けてくる。初期だと不躾な質問も気にせずにする。

妙な人間臭さと機械的反応。


 それらのアンバランスさが、葛城がサイバノイドに──特に、この初期状態のサイバノイドに、苦手意識を持つ理由であると彼女自身は分析していた。


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