ドロイド進化論


 葛城が手を伸ばすのをじっと見つめる目に構うことなく、クッキーを口にする。

 サクッという軽さと、中のしっとりとした程よい甘さに、暫し浸る。

 ほんのりとした温かさがまだ残っていて、来栖の手作りなんだろうと見当がついた。


「おいしいわ」

 なんとなく何も言わないでいるのが心苦しく感じ、そう言葉にする。

 人間だったら『おざなりだ』とかいう輩もいるだろうが、来栖は額面通りに受け取り、笑顔を作った。

 その笑顔から目をそらし、葛城はティーカップを持ったまま反対の手を書類に伸ばす。

 さっきまで目を通していた書類の下から、クリップで留められた分厚い紙の束を取り出した。


「そういえば……こないだ出して貰ったこの書類だけど」

 葛城の言葉に、来栖は笑顔を消した。

 オンオフの切り替えの素早いところは評価に値する。


「この理論、面白いわね」


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