Escape ~殺人犯と私~
5…
容疑者の事を思いながら
私は眠りの世界に引きずり込まれた。
その時
ぷつり。と、テレビの電源が落ちた。
夢うつつの私は、眠気眼でテレビを見る。
眠り込むお婆さんと、膝を抱えてる私の姿が
真っ黒の画面に映り込んでいた。
そして……
私の斜め後ろには
真っ黒い学生服をまとった少年が
まるで殺人鬼のように
気配すら無く立っていた。
「……っ!!!」
私は幽霊でも見たかのように
声が出せない程にビックリして、ソファーから落っこちた。
そんな音がしても、お婆さんは夢の中で起きる気配すら見せない。
すると、少年は
真っ暗なテレビ画面に向けていた眼を
床に落ちている私へと向けた。
横目で私を見下す殺気立った表情に
私は金縛り状態になって、冷や汗を握るように、じゅうたんを掴む。
少年の醸す雰囲気は、DV彼氏とは明らかに違う
暴力なんてそんなレベルじゃない気がした。
首を締められた時のように、本能的に危機を悟った。
私の心臓は発作のようにバクバクと鳴っている。
「……気づいたろ」