新月の夜
の。本当はね。寂しいのかな…?お兄ちゃんが来て、充実してたから。不思議。矛盾してる。わがまま。」

そこへ、

「そんなこと考えていたのか。」

亜希だ。亜希は優しく、

「あつきは絢美を捨てたりしない。ああ見えて、私と同じように絢美ちゃんかわいい♪なんてね。あつきはあつきで決めるだろう。無理強いすると苦痛なだけ。あいつは絢美の近くにいるのを望んでるのじゃないかなぁ。姫。」
「お兄ちゃん?」
「信じてあげよう、里帰りしてるから。あのお姉さんいい人だし。」
「へ?」
「変?」
「お姉さんなんて。」
「ふふふ、姫目線ですよ。」


亜希は悠太を呼び出す。

「何です?」
「両親を会わせたい。」
「?」
「あなたの母親と私らの母親の繋がり。内緒で会わせたい。驚かせたい。私達が両親を呼び寄せる。お願いだ。母は会いたがっていた。でも、仕事があれば、忙しいと思っていた。ここの地形を知らない両親は、来る事はできないまま過ぎていった。あなたの協力が欲しい。」

悠太は、

「…わかりました。どうすればいいですか?」
「母にも内緒にしておいたほうが母も喜ぶ。」
「父と兄には仕掛人として話していいですか?」
「いいですよ。」
「兄を案内役として同行させます。母親似のオレではばれてしまう恐れがあります。父親似の兄なら家に案内できるかも知れません。」
「ありがとう。」

悠太は亜希に、

「名前で呼んで欲しいです。きちんと名前がある。マニュアル通りの喋りはいらない。堅苦しい。」
「わかりました。悠太くん。」
「…みんなの前ならいいですけど、オレの前だと普通に喋って下さい。特別扱いは嫌です。」


一方、あつきはその頃、史奈の自宅近くにいた。あつきと史奈は手を繋いでいる。すると、

「あら史ちゃん。」

史奈は頭をぺこりと下げて、

「おはようございます。」
「どうしたの?」
「へへ。結婚したい大切な人です。ね。」

にこっ。

おばさんはあつきのカオを見て、

「あなた…娘の次は娘の大事な史ちゃんを!?」
「…え?」

はたこうとする。史奈は、

「おばさん、やめてください!彼は違います。…信じて下さい。お姉ちゃんの側にいたのは、彼のお兄さん。」

あつきは驚いて、
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