新月の夜
ている。

「あさみ、なっちゃんぐずって大変だ。」
「ごめんね。」

母は赤ちゃんを抱く。

「で、何でここにみんないるんだ?」

兄は、

「父さんやっぱり鈍感だね。」

義人は、

「鈍感なのは今に始まったものではない。ナオキが鈍感だから私がしっかりしないといけなかったんだ。天然だ。まあ、鈍感なナオキにはあさみちゃんのはっきりした゛好きです!゛がなければ結婚できなかっただろう。あれがあって気付いた。だいたいモテてるのさえ気付かなかったんだからオキラクだよね。」
「…鈍感で悪かったな。」
「悪いよ。だからあさみちゃんが逃げたんだ。お腹の中にいた和ちゃんがかわいそう。うちの嫁さんと付き合ってたのさえ気付かないんだから。何年間の付き合いだよ。幼なじみだぞ。気付けって。」
「…で何?坂井くんまで。そういや悠太、仕事はもういいのか?」
「……。」

悠太の兄と義人は呆れる。母は、

「ナオキさん…。(ひそひそ)そこにいる女のコのお腹に悠の赤ちゃんがいるの。」
「はぁ?」

義人は、

「早く気付け…。」
「このコは…。」
「だから坂井くん呼んだのよ。わかる?」

父の思考回路ぐるぐる。

「…何となくわかってきた。」

義人は、

「落ち着け、ナオキ。」

父は麻友美に、

「赤ちゃんは大丈夫か?」

義人は父の肩を叩き、

「ナオキ、キミが一番大丈夫か?」
「…理解できてる。このコが悠太の相手だとは正直びっくりした。」

母は、

「わかりやすかったのに。私なんて悠が彼女を押し倒してるのを見たのよ。」
「言うな!!」
「……。」

麻友美に悪阻が。

「う…!?」

走る。洗面台。

血を吐いている麻友美。背中を優しくさする悠太。ふらつく麻友美を抱き抱え、

「父さん、許して下さい。本当にダメな息子でごめん。妊娠させてしまった。」

父は、

「仕方ない。私も同じだった。一つ言っておく。お腹の赤ちゃんは彼女とお前の子供として生きたいから身篭ったんだ。だから彼女を愛さないには赤ちゃんが悲しんで彼女を苦しめる。だからたくさん愛してあげなさい。私は見てる。お前がそうでなければ実の息子であっても殴る。いいな!」
「ありがとうございます。」
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