新月の夜
いるんだろ?」
「…まあね。」
「麻友より彼女を抱けよ。」
「それは恐れ多い…。」

麻友美は、

「抱いてあげたら?期待してるはずだよ。愛されたいキモチは一緒だよ。」
「姉さん…。」
「年上だとか関係ないじゃん。」
「年じゃなくて…本当に僕でいいのか、相応しくないよ。だって僕だよ。」
「祐がいいからだよ。好きだから。落ち着くから。祐に抱っこしてもらってキスしてると一番落ち着くって言ってたよ。落ち着くんだよ素晴らしいじゃん。お兄さん公認だから障害ないし。」
「だからって…。」
「お兄さん?」
「うん。お兄さん公認なの。」

祐貴の電話が鳴る。

「ほら、出なさい。彼女でしょ?」
「…もしもし?」
「祐ちゃん、麻友ちゃん大丈夫?あつきお兄ちゃんが隠してて本当にびっくりしたわ。後でお仕置きしたけどね。」
「…姉さんは大丈夫です。今日はいろいろあったみたいで疲れてます。」
「びっくりしたわ。いきなり彼のお母さんが麻友ちゃんさらいに来たんだもん。あの後は呆然としたわ。ただでさえ妊娠でびっくりしたのにまさかあんな事…。あつきお兄ちゃんに悠君だけ乗せてもらって助けに行ったけどあれは悠くんを連れて来させる策略でしょ?」
「……。」
「なあに?お姉さんばかりでつまらないの?」
「いえいえ…。」
「堅苦しいよ。普通にして?もっと素のままな祐ちゃんが欲しいもん。キライなの?」
「好きだよ。姉さんと兄さんの前で好きだよ言ったら恥ずかしいよ。」
「お兄さん?」
「3人で部屋にいるんだ。」
「え…。」
「心配なんだ。兄さんも僕も姉さんを放っておけない。」
「優しいね。私もお兄ちゃんに世話焼いてばかり。亜希兄ちゃんもいい人見つければいいのに。」

電話から、

「私は絢美が幸せならばいいよ。」

と漏れてくる声。

「お兄ちゃん…。」
「姫をお慕いするのが仕事です。」
「お兄ちゃんも幸せにならないとダメ!」
「…電話中なら話しなさい。」
「…あ。」
「話さないならいたずらしますよ。」
「あのね…。」
「お兄さん優しいですね。」
「うん。ねぇ、麻友ちゃんと話していい?ごめんね、自分勝手で。」
「いいよ。大好きだから。」
「きゃっ。」
「あ、絢美が照れてる。」

聞こえる亜希の声。祐貴は麻友美
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