新月の夜
だ。

「はぁ…このままじゃ本当に悠の彼女に嫉妬しそうだわ…。」

あさみは義人に、

「お義兄さんも来てね。ナオキさんから聞きました。お姉ちゃんに電話したら。よっちゃんと二人で迎えに来てってさ。子供達あと8人はムリって。」
「わかりました。」


あさみと兄は歩いている。

「こう見ると親子かな?恋人かな?って自己満足です。こんなに若い、自分の息子以外の人と歩くなんて思っていなかった。」

兄は笑って、

「恋人でしょうか、おこがましいですけど奥様はお若い、あなたは和也より一つ上よね?」
「…はい。」
「19才年下か。19…逃げてたな。本当に軽はずみな事をしたわ。お腹に和也がいたのに隠してホステスになろうとしたり。そりゃばれるわ。悪阻がひどかったもの。旦那さん以外の人にお尻を触られる事が辛かった。隠してたけれど心の中では助けてって。簡単にお腹の子供の父親なんて忘れられないわ。旦那さんしかいなかった。私から惚れたのだもの私の我が儘で関係を持って根付いた命。いくら望まれていない命だとしても相手を忘れるなんて出来ない。刺すような痛みだった。お互い初めてで、ぎこちなくて、なんて言えばいいのかなぁ、いきなりだった。でも旦那さんは優しくて、気遣ってくれて、やめようか?と言ってくれたけど旦那さんの体温が欲しかった。温かくて、気持ち良かった。悠も初めては彼女よ。ああだけどシャイだし、人はきちんと選ぶ。自分の自惚れだけで誰ふり構わず抱くのだけはやめなさいとしつけたし、それくらいわかってる。最初はシャイでも、欲しければ男になる。それだけだと思うの。」
「…麻友も初めては彼です。最初は不安定で、困っていました。」
「悠は言ってたわ。きっと初めてだっただろう。あまりにも痛がっていて、悪い事をしてしまったと。きちんと理性はある子よ。」


兄は奈央を車に乗せる。母は奈央の横にいて優しく撫でている。

「妹さん呼んで欲しいの。少しでも悠のそばにいさせてあげたいでしょ?離れたからわかるの。赤ちゃんにとってパパは大切なの。抱きしめて体温で温めてあげないと、愛をあげないといけないの。」
「はい。」


「もしもし、麻友。あと10分で戻る。今日はお兄ちゃんと食事だ。」
「え…でも。」
「懐妊祝い。」
「私…悪阻が…だし…人目についたら…
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