新月の夜
坂井家への挨拶
それからというもの、麻友美の妊娠に世間は戸惑いながらも受け入れる。悠太の両親は改めて麻友美の家に訪れて謝る。悠太は電話で謝っているものの初対面。悠太は土下座して、

「麻友美さんを下さい!」

と言う。父は少しいらっとして、

「順番が違い過ぎないかな。普通は結婚してできるものだ。」
「……。」

悠太の両親は何も言えない同じ立場。

「子供も少しずつ成長している。気付いた時、堕ろす事も考えるよう言った。それだけは将来の為に避けたかった。もう育っている。戻れない。」
「はい、誓います。一生守ります。」
「結婚したいと言ってももう公表しては結婚させずにはいられないだろう。でも、父親としての意地だ。…本当は嫁に出したくない、しまっておきたいくらいかわいい娘。わかっている。早く一緒に住む新居を探さなければいけない。君も次男だろう、そうご両親に頼る訳にはいかないだろう。」
「…わかっています。家には兄がいて、ましては幼い妹がいます。すねをかじることはいけません。ある程度セキュリティの効いた所を二人で少しずつ考えています。」


兄と弟は陰で聞いている。

「姉さんが家を離れると思ったら少し複雑だね。」

弟が言うと兄は、

「会いに行けばいいじゃないか。いなくなるわけじゃない。」
「兄さんも行く?」
「行くよ。監視しないとな。」
「はい。」
「まだ甘えたいのか?離れるのも愛だよ。」
「離れてます。彼女いるし。」
「…いいなぁ、お兄ちゃんも彼女欲しいなぁ。で、祐は彼女と認識したんだ。おどおど君。少し前まで本当に僕でいいのかなぁ?って言ってたのに。」
「触発されたんだよ。二人に、姉さんが妊娠して彼と一緒になって、ラブラブで、僕は彼女を守らないといけないと意識が大きくなった。不安はあるけど不安だらけで対処したら彼女もきっと辛い。考えて振り返ってみた。彼女はかわいい。彼女は企みで甘えたりしない。キスをせがまれたり、甘えたりする。」
「結婚意識してる?」
「そりゃ…。姉さんが落ち着いたらプロポーズしようと思っている。坂井祐貴という一人の男として。」
「カラダの関係は?」
「無いよ。お互いわかってるよ。その話は出ない。大切にしたいから。失いたくないから。」
「…そっか。」
「兄さんは貞操を守らないのがいいの?」
< 235 / 257 >

この作品をシェア

pagetop